年末調整
会社から受け取る給与は、所得税が「源泉徴収」されています。しかし、その年1年間に給与から源泉徴収された所得税の合計額は、必ずしも1年間に納めるべき税額とはなりません。このため、1年間に源泉徴収された所得税の合計額と1年間に納めるべき所得税を一致させる必要があり、それを計算・調整する手続を「年末調整」といいます。
年末調整の対象となる人は、年末調整を行う日までに給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している一定の人です。
平成30年の税制改正の影響を受け、令和2年1月から源泉所得税の改正が行われます。これにより、来年(令和2年)分の年末調整において、一部手続きに影響がでることになりました。今年分の年末調整の手続きにつきましても、『令和2年分 給与所得者の扶養控除等申告書』へ記入する際に注意が必要です。
今から現行内容と変更点をしっかり理解しておきましょう。
- 配偶者控除
対象:(1) 控除を受ける人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入金額が1,200万円以下)
(2) 配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入金額が103万円以下)
控除額: 控除対象配偶者の年齢により次の表のようになっています。
(注)老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年12月31日現在の年齢が
70歳以上の人をいいます。
控除を受ける本人の 年間給与収入金額 | 控除額 | |
控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
1,120万円以下 | 38万円 | 48万円 |
1,120万円超1,170万円以下 | 26万円 | 32万円 |
1,170万円超1,200万円以下 | 13万円 | 16万円 |
- 配偶者特別控除 ※ 平成31年(令和元年)分まで(令和2年分から改正あり)
対象:(1) 控除を受ける人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入金額が1,200万円以下)
(2) 配偶者の年間の合計所得金額が38万円超123万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入金額が103万円超201.6万円未満)
控除額: 配偶者の合計所得金額に応じて次の表のようになっています。
配偶者の 年間給与収入金額 | 控除を受ける納税者本人の年間給与収入金額 | ||
1,120万円以下 | 1,120万円超 1,170万円以下 | 1,170万円超 1,200万円以下 | |
103万円超150万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
150万円超155万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
155万円超160万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
160万円超166.8万円未満 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
166.8万円以上175.2万円未満 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
175.2万円以上183.2万円未満 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
183.2万円以上190.4万円未満 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
190.4万円以上197.2万円未満 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
197.2万円以上201.6万円未満 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
201.6万円以上 | 0円 | 0円 | 0円 |
- 扶養控除 ※ 平成31年(令和元年)分まで(令和2年分から改正あり)
対象: 扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
控除額: 控除対象配偶者の年齢により次の表のようになっています。
区分 | 控除額 | |
一般の控除対象扶養親族(※1) | 38万円 | |
特定扶養親族(※2) | 63万円 | |
老人扶養親族(※3) | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等(※4) | 58万円 |
※1 「控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
※2 「特定扶養親族」とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
※3 「老人扶養親族」とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
※4 「同居老親等」とは、老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と常に同居している人をいいます。
※5 同居老親等の「同居」については、病気の治療のため入院していることにより納税者等と別居している場合は、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても、同居に該当するものとして取り扱って差し支えありません。ただし、老人ホーム等へ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、同居しているとはいえません。
- 障害者控除
対象: 納税者自身又は控除対象配偶者や扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合
控除額: 障害の区分により次の表のようになっています。
区分 | 控除額 |
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者※ | 75万円 |
- 同居特別障害者とは、特別障害者である控除対象配偶者や扶養親族で、自己や配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常としている方です。
- 寡婦控除・特別の寡婦・寡夫控除
対象: 受給者本人が、その年の12月31日現在の状況で、次の要件のいずれかに当てはまる人
受給者本人の性別 | 扶養親族等の要件 | 死別・離別・生死不明の別 | 受給者本人の所得要件 | 区分: 控除額 |
女性 |
扶養親族である子がいる |
死別・離別・生死不明 | 500万円以下 | 特別の寡婦: 35万円 |
500万円超 |
寡婦: 27万円 | |||
扶養親族(子以外)がいる |
要件なし | |||
年間給与収入が103万円以下の生計を一にする子がいる | ||||
扶養親族や生計を一にする子がいない | 死別・生死不明 | 500万円以下 | ||
男性 | 年間給与収入が103万円以下の生計を一にする子がいる | 死別・離別・生死不明 | 500万円以下 | 寡夫: 27万円 |
- 子は他の方の同一生計配偶者または扶養親族とされていない方に限られます。
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
対象: 自己若しくは自己と生計を一にする配偶者その他の親族が所有している家屋で常時その居住の用に供するもの又はこれらの者の有する生活用動産を保険や共済の目的とする契約で、かつ、地震、噴火又は津波を原因とする火災、損壊等による損害をてん補する保険金や共済金が支払われるものに限られます。
控除額: 次により計算した金額が控除額となります。
区分 | 年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
(1)地震保険料 | 50,000円以下 | 支払金額 |
50,000円超 | 一律50,000円 | |
(2)旧長期損害保険料 | 10,000円以下 | 支払金額 |
10,000円を超え20,000円以下 | 支払金額÷2+5,000円 | |
20,000円超 | 15,000円 | |
(1)・(2)両方がある場合 |
| (1)、(2)それぞれの方法で計算した合計額(最高50,000円) |
- 小規模企業共済等掛金控除
対象: 確定拠出年金やiDeCoなどの企業型年金加入者掛金・個人型年金加入者掛金、中小企業の役員や個人事業主が加入できる小規模企業共済、心身障害者扶養共済制度の掛金を年内に支払った方。
控除額: その年に支払った掛金の全額
- 住宅借入金等特別控除
対象: 住宅の新築、取得又は増改築等をするためのもので、かつ、住宅の取得等のために直接必要な借入金等がある人。ただし、初年度は確定申告により控除の適用を受ける必要があります。
住宅を居住の用に供した日 |
消費税 |
控除期間 |
控除額の計算 |
控除限度額 |
平成26年 4月1日~ 令和3年 12月31日 | 消費税8%の物件を購入 |
10年間 | ○通常の住宅のとき 4,000万円までの年末残高等×1% | 40万円 |
○認定住宅のとき 5,000万円までの年末残高等×1% | 50万円 | |||
令和元年 10月1日~ 令和2年 12月31日
|
消費税10%の物件を購入 |
10年間 | ○通常の住宅のとき 4,000万円までの年末残高等×1% | 40万円 |
○認定住宅のとき 5,000万円までの年末残高等×1% | 50万円 | |||
+3年間 | ○上記の10年間の計算方法か、下記の計算方法のいずれか少ない額※ 4,000万円までの住宅取得価額(税抜)×2%÷3 |
- | ||
※過去の分 平成25年 1月1日~ 平成26年 3月31日 |
消費税5%の物件を購入 |
10年間 | ○通常の住宅のとき 2,000万円までの年末残高等×1% | 20万円 |
○認定住宅のとき 3,000万円までの年末残高等×1% |
30万円 |
※ 住宅取得価額は建物の価額のみで、補助金や取得用資金の贈与額は含みません。
※ 認定住宅とは『認定長期優良住宅』や『認定低炭素住宅』のことをいいます。
- 令和2年度税制改正で年末調整に影響する内容
平成30年の源泉所得税の改正において、給与所得控除と基礎控除に変更が行われました。
改正の適用は令和2年1月1日からですが、平成31年(令和元年)分の年末調整の手続きについても、『令和2年分 給与所得者の扶養控除等申告書』へ記入する際に注意が必要です。
- 給与所得控除の引き下げ・基礎控除の引き上げ
サラリーマンの給与所得に適用される「給与所得控除額を一律10万円引き下げ」、全ての方の所得に適用される「基礎控除額を10万円引き上げる」ことになりました。
控除を受ける本人の 年間給与収入金額 | 給与所得控除の増減 (令和元年対比) | 基礎控除の増減 (令和元年対比) | 所得税への影響 |
850万円以下 | -10万円 | +10万円 | 影響なし |
850万円超 2,595万円以下 | ―10万円以上 ~-25万円 | +10万円 | 給与所得控除の 減額分が増税 |
2,595万円超
| -25万円 | -6万円、-22万円、-38万円のいずれか | 増税 |
- 上記に伴い、一部控除の合計所得金額の要件も見直されます。
- 所得税額調整控除
上記を受け、介護や子育て世代の負担が増えすぎないよう、年収850万円以上の方を対象とした所得税額調整控除が新しく創設されました。(特別障害者の親族や23歳未満の扶養親族がいる場合などに15万円以下の控除)
- 単身児童扶養者(住民税に関する事項)
対象: 児童扶養手当の支給を受けている児童(年間収入金額が103万円以下)と生計を一にする父又は母(年収204万円以下)のうち、未婚、又は配偶者の生死が明らかでない者に該当する場合。(事実婚か同様の事情にある場合はどちらも該当しません。)
措置: 扶養者(本人)の住民税が非課税。(令和3年から)